探求のある社会科の授業を目指して

関西の公立小学校で働いています。社会科の授業を楽しくするための授業ことを書いています。

スーパーマーケット②

スーパーマーケットのしくみの勉強に入る前に、教科書ではお店がどのようにして儲けを出しているのかを説明しています。

 

教科書の問い

 「店でお金をはらうしくみはどうなっているのだろう」

          ↓

 

◎深堀りした問い

「作っている人はいくらで売っているのだろうか。」

「価格はどうやって決めているのだろう」

 

教科書では、レシートから読み取れる情報を扱っています。レシートには、買った日時、時刻、品物、金額、払った金額、おつり、消費税などが記されています。

そして、教科書の説明で特徴的なのは、買い物のしくみを提示していることです。教科書では、100円の品物は、お店が70円で仕入れていること。つまり、100円のものを売っても30円しか儲けにならないことを取り上げています。原価が70%で30%が利益になるという考え方ですね。

 では、実際にいくらで仕入れているのでしょうか。農林水産省にこんなデータがあります。野菜のデータを見てみると

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出典 

平成29年度食品流通段階別価格形成調査報告(青果物調査及び水産物調査)

47.5%が生産者の受け取り価格になっています。そして、スーパーマーケットの売上は20.4%になります。野菜によって多少前後しますか、およそ20%ぐらいに収まっています。37.9%は、仲介業者などが入っていることになります。

次に、魚はどうでしょうか。

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出典

平成29年度食品流通段階別価格形成調査報告(青果物調査及び水産物調査)

31.6%が生産者の価格、スーパーマーケットでは、およそ31.4%が売上になることがわかります。仲介等が37%になっています。野菜に比べると、生産者は、15.9%の減少、スーパーパーケットは、11%高いことがわかります。そこで、「野菜と魚ではこれほど受け取りのお金が違うのか」をさらに深い問いとして出してもいいですね。

 

 それでは、子どもたちが関心があるお菓子はどうでしょうか。全日本菓子業界が出している資料を見てみます。令和元年のデータでは、

 

   チョコレート  

   生産金額…3970億

   小売金額…5500億

 

  生産金額÷販売金額=スーパーマーケットの売上金額

と考えると、

3980÷5630=0.7069……となりますので、およそ30%が売上金額であることがわかります。教科書と同じですね。いくつか他のお菓子も見てみますと、

 

 スナック菓子

 生産金額…3120億

 小売金額…4476億

 3120÷4476=0.697…… およそ30%が売上金額

 

 ビスケット

 生産金額…2615億

 小売金額…3765億

 2615÷3765=0.6945…… およそ30%が売上金額

 

  

 洋生菓子

 生産金額…3300億

 小売金額…4154億

 3300÷4154=0.7944…… およそ20%が売上金額

 

 

 和生菓子

 生産金額…3812億

 小売金額…4650億

 3812÷4650=0.8197……およそ20%が売上金額

 

スナック菓子やビスケットに比べて、和洋の生菓子のほうが10%ほど売上金額としては下がります。先程の、野菜、魚と連動させて、どうして、「チョコレートやスナック菓子は、和洋生菓子はこれほど違うのか」をさらに深い問いとして出してもいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スーパーマーケット①

3年生で学習するスーパーマーケットの単元を考えていきます。教育出版の教科書は、一時間毎に学習する問いが書いてあります。それをもう少し深堀りした問いに変えてみたいと思います。

 

 ○教科書の問い

 「家の人たちはどのような店で買い物をしているのだろう。」

 「家の人たちは、どこで買い物をすることが多いのだろう」

            ↓

◎深堀りした問い。

「なぜ、スーパーで買い物をすることが多いのか」

 教科書では、家の人にインタビューをして日々の買い物をどこでしているかをグラフに表すようになっています。そこで出てくる結論が、スーパーマーケットで買い物をする機会がとても多いことになります。実際、食事を作る保護者はスーパーマーケットで買い物をすることが多いと思われます。そこで、「なぜ、スーパーマーケットで買い物をすることが多いのか」と深堀りしてみます。そもそもスーパーマーケットはいつから日本にあるのでしょうか。「スーパーマーケット」しての名称が初めて使われたのは、1952年に京阪京橋駅内にできた「京阪スーパーマーケット」が最初とされています。

 それでは、現在のスーパー・マーケットの数はいくつあるのでしょうか。2020年11月末現在ですが、全国で、22,397店あります。

 出典 統計・データでみるスーパー・マーケット

 

スーパーマーケットが買い物の主流になる前はいくつかの商店を渡り歩いて買い物をしていました。商店街の現在の状況を見てみると、

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出典 平成30年度 商店街実態調査報告書 概要版 中小企業庁

空き店舗の割合が、平成15年から比べると高いことがわかります。商店街で働く人たちが、今後どう感じているかと言うと、

 

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 出典 平成30年度 商店街実態調査報告書 概要版 中小企業庁

近年、上位に来ているのは、後継者問題と、店舗の老朽化、集客力などになります。それでは、コンビニの数は日本にいくつあるのでしょうか。

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     出典 ガベージニュース

35年間の間におよそ9.2倍の数になっていることがわかります。スーパーマーケットの数は22397店なので2.6倍以上もコンビニがあることがわかります。会社別に見てみると、

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       出典 ガベージニュース

セブンイレブンが最も多く、ファミリーマート、ローソンの3社が大きな割合を占めていることがわかります。コンビニは、北海道のセイコーマートなど地方に根付いた店も多いので、

 「校区や地域の中にどんなコンビニがいくつあるか」

を調べても面白いと思います。

 次に、最近の主流になりつつあるインターネットの買い物はどれぐらいの規模になっているのでしょうか。

 インターネットの買い物は、1995年から広まってきました。Windows95が出た年ですね。この年に、アメリカでYahoo!が設立され、7月にAmazon.comがサービスを開始しています。日本法人ができたのは翌年の96年です。楽天はその翌年の97年に設立されています。1990年代後半からインターネットの買い物が普及してきます。現在は、どのぐらいの金額になっているのでしょうか。総務省の統計に様々な資料がありますので参照してみます。

ネットショッピングをどれぐらいの世帯が利用しているかを見てみると、

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 出典 法務局 家計消費状況調査年報(令和元年)結果の概況

2019年は、全世帯の42.8%が利用していることがわかります。最近の10年間をみても、2・3倍以上の伸びになっています。このグラフは二人以上の世帯のデータなので、単身の方を入れるともっと高い数字になっていると考えられます。また、どのような商品を買っているかを見ていくと、

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 出典 法務局 家計消費状況調査年報(令和元年)結果の概況

旅行、食料品、衣料品、本、ゲーム、家電にお金が使われていることがわかります。「Uber Eats」や「出前館」など、インターネットを利用した出前が流行していますし、「メルカリ」や「ジモティ」などで、会社を仲介しての個人売買も盛んなので、インターネットショッピングの割合は今後も増えていくと思います。子どもたちには家族へのアンケートで、

「どんな商品をインターネットを使って買うことがあるか」

を聞いてくるのもいいと思います。

最初に提示した「なぜ、スーパーで買い物をすることが多いのか」の深堀りの問いに対する授業展開は、

・(食料品だけでなく日用品も売っている)スーパーマーケットの増加。

・個人商店の減少・衰退の傾向

・コンビニの増加

・ネットショッピングの増加

の4点を考え、実際に調べてみることで深まりのある授業になるのではないでしょうか。

 

 

社会科の人気⑨

 それでは、社会科の授業を好きになってもらうために、深い学びをするためにはどの方向を目指せばいいのでしょうか。簡単な解決策は、嫌いな理由の反対のことすれば良いですよね。「覚えることがいっぱいある」という理由で嫌いになる子どもたちがいます。この改善策は、

 

 社会科=覚える教科ではない

 

という意識改革を教師が持てばいいのです。少なくとも小学校の場合は、社会科は語句の暗記をたくさん必要とする教科ではありません。事実、中学・高校の教科書には重要ワードは太文字になっていますが、小学校の教科書はそうではありません。これは教科書会社が意図的にそうしているのです。(実際に教育出版の方に聞きました。)それでテストができるのか、という反論があると思います公立小学校の先生は(もちろん自作される先生もいますが)いわゆる「業者テスト」を買うことが多いです。社会科の業者テストは暗記した語句を書く設問はほとんどありません。複数の解答から一つ選んだり、線で結んだりすることが多いです。グラフなどの資料や写真から解答を選ぶ問題もよく出題されます。記述する場合も、例えば「地産地消」などのキーワードを用いて書く程度です。つまりひとつひとつの語句を新出漢字のように覚えるのではなく、その単元で大切なことを把握しているかどうかのテストになっているのです。授業では、その大切なことは何かを考える形の授業にしていけばいいと思います。

 アンケートの中に授業が好きな理由として複数の子が挙げていたのは、

 

 「なぜ、~なのか」を考えることが面白い

 

でした。アンケートのお願いをした先生に社会科の授業をどうしているかを聞いてみたら、「常に子どもたちに何かを考える工夫を入れた授業にしている」と仰っていました。子どもたちは、それらの問題を個人で、グループで話合って考えることが好きなのです。

「なぜ、~なのか」は、調べればわかることもあるでしょう。また、調べても話し合っても答えが出ない問いもあると思います。例え調べたらわかる問いでも、教師に調べなさいと言われて受動的に調べるのと、自分から調べたいと思って能動的に調べるのでは子どもたちの意欲が格段に違います。そして、それが「覚えなければならない語句」だった場合では定着度も全然変わってくると思います。一つひとつの語句を無機的に覚えるのではなく、なぜを問う授業の中で覚える必然性を持たせてあげられば最高の授業になります。次回から、具体的に単元の中で、なぜを問う授業ができるかを考えていきます。

社会科の人気⑧

今回は授業内容を見ていきます。社会科がきらいな意見で多かったのが

 

 

「覚えることがいっぱいある」

 

 

でした。国語や算数に比べて社会科は確かに事象や人物、さらに年号など教師から覚えてといわれる単語が多いです。単語を覚えるだけならまだいいのですが、産業や工業になると1位○県(国)、2位□県(国)、3位、4位……と順番まで覚える必要まであります。覚えるだけでも大変な上で、こんな意見ありました。

 

 

「わからない漢字が多い」

 

 

教科の性質的に、どうしても子どもたちが普段聞き慣れない言葉や漢字を使わなければ説明ができない場合もあります。5年生の教科書だけでも「盆地」「耕地整理」「200海里」

「フードマイレージ」「持続可能な社会」「関税」など、意味が取りにくい言葉がたくさん出てきます。覚えることがたくさんあり、その意味を取りづらい上に極めつけはこの意見でした。

 

 

「内容が難しい」

 

3,4年生の社会科は比較的に自分の身の回りの生活に関わりある事柄が多いので取っ付きやすい部分があります。しかし、5年生の社会科では、国土や貿易。産業、漁業など、現代日本の時事問題を中心に学習が進みます。急にいま自分の生きている世界とは切り離されていると子どもたちは感じてしまっています。社会問題に関心が高い子どもには楽しいかもしれませんが、大半の子どもがそうではないです。

 

 これは、わたしの主観ですが社会科は5年生で嫌い・苦手になる子どもが多い気がします。上記3つの理由からでしょう。6年生になって歴史学習が好きな子どもは多いです。やはり、自分のルーツを知ることに関心が高いのですね。しかし、今年度の指導要領改定によって、6年生でも歴史学習よりも先に公民分野を学習することになりました。選挙権の年齢が18才になったことなど、様々な理由からそうなったと思われます。しかし、政治に関心が高い子が多とは思いませんので、さらに社会科嫌いを増やす懸念があります。

社会科の人気⑦

 それでは、社会科のきらいなところはどうでしょうか。これは好きなところと比べてだいぶ項目が多かったです。その中でも人数が多かかった項目をあげていきます。最初はこれです。

 

 

「教科書の容量が多い・重い」

 

 小学校は今年度から新学習指導要領の元、新しい教科書を使っています。わたしの市は昨年度に引き続き教育出版の教科書を使っています。教科書で大きく変わった点は、

 

 「各学年、教科書が一冊になった」

 

ことです。昨年度までは、3・4年生という括りで教科書は上下になっていました。同様に5年生、6年生でも上下の分冊になっていました。しかし、新しい教科書では、各学年毎に1冊ずつになっています。結果、教科書のページ数が増え重くなっています。

 利点は子どもたちが1年間を見通した学習ができることが考えられます。しかし、その利点よりも重さの方を負担に感じているようです。社会科は、教科書とノート以外に、3・4年生では地図帳と自分の住んでいる地域に対応した副読本(地域の教科書的なもの)を持たされます。5・6年生はそれに加えて資料集も持たされることが多いのではないでしょうか。中学校や高校でも教科書以外の本を学校で持たされています。

 

 話は少しずれますが、どの新過程に切り替わり新教科書になったことで社会科に限らず、どの教科の教科書も大きく重くなっています。データは旧教科書でのアンケートですが、ランドセル白書2020によると、やはり教科書等の重さが負担になっていることがわかります。文部科学省も、いわゆる置き勉を通達していますが、教室内でのスペースの確保や盗難対策など簡単に解決する問題ではありません。さらに近い将来に一人一台のタブレット配布されます。タブレット付きカバーをつけた場合、このタブレットも相当な重さになります。全部を持ってきたり持って帰ったりするのは不可能と思います。

 

 話を戻します。社会科という教科の性質上、地域に根ざした本、また、教科書以外の資料・データが必要であることはわかります。子どもに持たす以上は、教師がそれらを授業で有効に使えているかどうかを問い直さなければいけないと思います。高学年の先生が資料集を買うのは「毎年買っているから」という理由もあります。資料ですので有効に使えば教科書との相乗効果で子どもたちの理解を促すことは確かです。でも、教師が教科書と資料集が上手に使えず中途半端になる状況は避けたいです。

社会科の人気⑥

また、社会科で好きなところについてこんな意見も多かったです。

 

 「自分が知らない社会の仕組みを教えてくれる」

 

社会科の存在意義は、まさにこれではないでしょうか。国語、算数、理科で学んだ知識・技能を使って、いま生きている社会を読み取ること。そのきっかけになるのが社会科の授業であるはずです。小学校の社会科では

 

 3年生…地域 工場・農家 道路 鉄道 警察 消防 昔のくらし・道具

 

 4年生…自分の住む都道府県  水 ゴミ リサイクル 災害

 

 5年生…日本の国土 米づくり 農業 自動車 メディア 情報 輸入 輸出

 

 6年生…政治 歴史 国際

 

を学びます。中学校では、小学校学んだことを更に深めるために地理、歴史、公民の3つの分野に教科書が分かれています。

 わたしたちが普段生活していく上で必要な社会的知識は、小中学校の知識で対応しています。だからこそ教師は、子どもたちに押さえてほしいことを外してはいけないと思います。それでは何を押さえて授業で学ぶのでしょうか。

      

社会科の人気⑤

 社会科見学など、体験を取り入れる授業が子どもたちには人気です。とはいえ、具体的な授業ばかりができないのもまた事実です。体験授業の次に好きなところで多かったのが

 

         「テレビ、動画の視聴」

 

でした。5年生の漁業など体験が困難な分野でも、「NHK for school」などの動画コンテンツなどを見ることで、理解が深まります。「You tube」も適切に使えばいいと思います。実際にわたしも動画をよく使います。社会科はどうしても教室で教師の説明・解説が多い座学授業が多くなりがちです。授業にメリハリをつけるためにも有効な学習ツールですね。