探求のある社会科の授業を目指して

関西の公立小学校で働いています。社会科の授業を楽しくするための授業ことを書いています。

スーパーマーケット⑦

 今回は、食品ロスについて考えてみます。まず、スーパーマーケットでは毎日どれぐらいのロスをしているのでしょうか。

 

f:id:syakaikanozyugyou:20210208213927p:plain

 

f:id:syakaikanozyugyou:20210208213956p:plain

出典 統計・データで見るスーパーマーケット

 

平均では青果では3.5%、水産では8.1%、畜産では6.1%出ていることがわかります。日配品(牛乳・ヨーグルト・バター・プリン・デザート、豆腐・納豆・漬物・麺類・佃煮・練製品など、毎日スーパーマーケットに配送され、消費期限が短いもの)も4.0%出ていることが分かります。魚類と肉類が割合が高いですね。

 

スーパーマーケットだけが食品ロスを出しているのでしょうか。日本全体ではそれぐらいの食品ロスなのでしょうか。農林水産省にデータがあるので見てみますと

 

f:id:syakaikanozyugyou:20210208214255p:plain

 

出典  農林水産省

 

実は、スーパーマーケットが出しているロスは全体の10%にすぎないのです。圧倒的に割合が多いのは家庭になります。また、一人に換算すると年間48kgも廃棄していることになります。前回にも考えましたが、家庭の買い過ぎ・残しすぎが問題でもあるのです。子どもたちにはこの事実を伝え、実際に自分の家ではどうなのかを話し合うことは大変有意義な活動だと思います。

 

それでは、スーパーマーケットは売れ残った商品をどうしているのでしょうか。生製品以外の食料品から見てみます。お菓子や加工食品、飲料などを店頭に並べるとき、店側と卸売側で決めたルールで「3分の1ルール」があります。これは、賞味期間を、3分割し、最初の3分の1の期間までにメーカーは店に納品する(納品期限)。そして次の3分の2までの間に小売は売り切り、売り切れなかったものは商品棚から撤去する(販売期限)というものです。

 これが問題になるのは、例えば3ヶ月の消費期限だとすると、製造日から最初の1ヶ月以内に店に納品されなければ、店側は業者に返品できてしまうことです。メリットは賞味期限が長いので新鮮で安全な食品を提供できることになります。しかしデメリットは、返品できてしまうことにより、賞味期限が長く(ここでは2ヶ月)残っているのに、廃棄しなければならないことです。一部はディスカウントストアなどに転売される場合もありますが、それでも売れ残りは廃棄になります。

ちなみにアメリカでは2分の1ルール、イタリアやベルギーでは3分の2ルールを採用しています。

 

日本でも食品ロス対策の一つとして、大手スーパーマーケットを中心に、3分の1ルールの見直しを進めています。また、どの程度の効果があったかの検証もしています。

 

f:id:syakaikanozyugyou:20210208214847p:plain

f:id:syakaikanozyugyou:20210208214921p:plain

出典 農林水産省

 

新鮮食品や生製品はどんな工夫をしているのでしょうか。子どもたちも大人もすぐ思いつく工夫は

 

 ・割引き・値引きをして売る

 

です。肉や魚、惣菜は、消費期限の当日になるほど割引率が大きくなって10%~50%(半額)になると思います。野菜や果物は消費期限は示されていませんが、少し色が悪くなると「見切り品」という形で半額かそれ以下で売られていることも多いです。もちろんスーパーの利益は落ちますが、売れ残るよりは割引してでも売り切った方が経済的にも環境的にもいいとの判断でしょう。

 

それでも売れ残った場合はどうしているのか。できるだけ廃棄を減らす工夫として、エコフィードの取り組みがあります。要はエコフィードとは、売れ残った新鮮品や惣菜を加工して、動物のエサにしようとする試みです。この取組みのおかげで平成29年度の食品廃棄物等の1,767万tのうち、1,230万tが再生利用されており、そのうち約7割の913万t飼料として利用されています。

 出典 農林水産省 エコフィードをめぐる情勢

 

スーパー側の工夫をまとめると

 

①3分の1ルールを改善して消費期限近くまで売れるようにする

②消費期限が近くなった食品の値引き・割引きをする

エコフィードに取り組む

になります。1990年代までは、期限が切れたものは廃棄することが当たり前だったのですが、2000年に食品リサイクル法ができてからは、企業側も工夫と努力するようになり、少しづつロスが減りつつあります。

 

それでは、家庭で、また自分でできることはないのでしょうか。次回はそれを考えていきます。