探求のある社会科の授業を目指して

関西の公立小学校で働いています。社会科の授業を楽しくするための授業ことを書いています。

スーパーマーケット④

教科書の問い

「店で売られている商品はどこからくるのか」

        ↓

深堀りした問い

「なぜ、外国産のものを売っているのか」

 

 ここでは、スーパーで売られている食品がどこから仕入れているのかを学習します。日本国内では、北海道から九州まで、様々な都道府県から野菜や果物を仕入れていることや、海外からも牛肉やコーヒー豆などを仕入れていることがわかります。外国は、イタリア、モータニア、中国、オーストラリア、ブラジル、アメリカの国々が教科書では取り上げられています。授業内容は、スーパーマーケットは安く安心なものを仕入れる工夫をしているという終わり方になります。

 

 そこで、もう少し深堀りします。まず、自分たちの学校の近くにあるスーパーのちらしを用意します。それを見ながら実際にどこから仕入れているのかを調べてみるのです。しかし、新聞を取っていない家庭も多くなり、また教師も新聞を取っているとは限りません。そこで、ShuFoo!というサイトを使います。このサイトは、全国のスーパー・マーケットのチラシが掲載されているのでとても便利です。

 細かくチラシを見ていくと、本当に様々な都道府県や外国から仕入れていることがわかります。それを見ると子どもたちから色々な疑問が出てくると思います。そこを総合(食育)などと関連させて調べていくと深い学習になると思われます。また、新たな問いや考えが浮かんできます。

 例えば、食肉には「北海道産」「鹿児島産」などと産地を書いてあるものがあります。一方、都道府県は書いておらず「国産」という表示のものがあります。国産はどこの都道府県なのでしょうか。表示義務上は、細かく都道府県を書く必要がなく、国産で十分であるとされています。しかし、それならば

 

「全部【国産】表示でもいいのに?」

 

と疑問を抱く児童もいると思います。実は、スーパーマーケット側の都合で、様々な地域から仕入れが多すぎて、表示を間違えることがあるので、一括してすべて「国産」にしているという理由もあるようです。

 

  しかし、さらに深調べすると、「国産」表示ができるのは、牛肉で例えると、外国で生まれた牛であっても、日本で飼育された期間が長かったら「国産」と名乗っていいという法律(食品表示基準 第18条 第1項 第2号のイ)があることがわかります。これは、国産と表示されていても、実は出生地は日本以外の場所の可能性もあることを意味します。日本産と思って食べている肉が外国で生まれた牛である可能性もあるのです。

 

 それでは、産まれは日本の牛肉や鶏肉でも、そのえさとなる飼料が外国産の場合、それは国産と呼んでいいのでしょうか。これについては、農林水産省は令和2年に新しい解釈を導入しています。

 食料自給率という場合、日本はカロリーベースを採用しています。牛肉を例にとると、2019年の食料自給率11%です。

この11%の数字は、

 

国内で育てている牛+国内産の飼料(えさ)

 

 のことを示しています。つまり、牛肉のえさも国内産をつかっているということです、国内産の飼料のことを飼料自給率といいます。つまり、食料自給率という場合、飼料自給率を反映させた計算方法です。

 一方、新しい解釈である食料国産率で牛肉をみると42%に割合が上昇します。この42%の数字は、

 

国内で育てている牛+国内産の飼料+輸入飼料

 

のことを示しています。食料自給率との違いは、えさに輸入産も含まれていることです。この数字だけをみると自給率そのものが上昇したように感じます。他の食料をみても数値が上がっています。

 

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  出典 農林水産省 令和元年度食料自給率について

 

つまり「国産」という言葉ひとつをとっても様々な解釈ができてしまうのです。小学3年生には上記の内容はもちろん難しいし理解するのは困難です。授業だけでは、消化するのも大変です。

しかし、考えるきっかけを提示することは大切です。社会科で大切なのは、

「考え、話し合うこと」

です。話し合うのは子どもたち同士だけではありません。子どもが授業後、家に帰って晩ごはんのときに保護者と授業内容で話し合うようなことができれば最高の社会科の授業と思いませんか。

 

 話を戻します。よく地産地消と言われます。自分の住んでいる都道府県産のものがどれぐらい売っているか調べても面白いと思います。都市部ほど自分の地域の食材は少なくなっています。

 

 そして、今回の本題です。なぜ食品をわざわざ海外から輸入し売らなければいけないのでしょうか。日本産の方がなんとなく安全で安心な気がすることを3年生の子どもたちは考えていると思います。それなのになぜ海外から…?

子どもたちか出る意見で予想されるのは。

 

・外国産しかない(日本にはない)

・外国産の方が安い

・外国産の方が美味しい

・スーパーマーケットと外国の人が仲がいい

・日本人より外国人のほうがいい人だから

 などが考えられるでしょうか。どれも正解だと思います。次の問いが浮かび上がってきます。

 

 「外国産ばかり買っていると、日本の生産者は困らないのか?」

 

先程、食料自給率を取り上げましたが、実はこの問いは輸出・輸入の単元がある5年生で学習します。3年生から5年生に発展的に接続するためにも「考え・話し合う」ことをしておきたいですね。